女優・中井友望さんが初主演を務める、映画『サーチライト-遊星散歩-』が、10月14日からK’s cinemaほかにて全国順次公開される。映画の見どころから、中井さんの今後について伺いました。

〈INTERVIEW〉

─ 作品への出演が決まった時はどのような気持ちでしたか。

企画自体は撮影の1、2年前から決まっていたので、嬉しいというよりは「やっと」という気持ちでいっぱいでした。お話をいただいた時、これまで様々な作品へ出演してきた中で、少しずつ自分に自信がついてきたタイミングだったのでよかったです。

─ 中井さんが演じたのは、主人公の内田果歩という、若年性認知症を発症した母親を抱えながら、貧困に陥った先に「JK散歩」の世界へと足を踏み入れていく女子高生ですが、中井さんはこの役にどのように向き合いましたか。

この役は、脚本の小野周子さんが私のイメージで当て書きをしてくださり出来上がったものなので、あまり自分と離れているようには感じませんでした。果歩のような経験をしたことはありませんが、演じる中で「こういう感情になったことあるなぁ」と、彼女の感情に共感できる部分は多かったです。

─ 自分の中の感情の引き出しをたくさん出せましたか？

はい！今までの作品では、頭で考えて演技することが多かったのですが、今回は考えるよりも先に感情が溢れました。「こんなに自分って感情出せるんだ」「こんなに涙が出てくるんだ」と自分でも驚きました。なので「相手にこう見られたい」「上手く見せよう」などは一切考えず、あくまで自然体で演技に挑みました。その分、感情的にしんどかった一方で、とても楽しくもありました。

─ 作品の中で特に印象的なのが、果歩と彼女の母親の関係性ですよね。

彼女たちはまるで姉妹のように密な関係性です。実際の私とは違っているので、演じていてとても新鮮でした。特に好きなのが、お母さん役の安藤聖さんと布団の中で遊ぶシーンで、このシーンを演じている時、安藤さんと「本当に親子になれた」と感じたんです。実際の安藤さんはとても明るく、気さくな方なので、演技とのギャップに「同じ人じゃないみたい！」と驚かされました。

─ 撮影時のエピソードを教えてください。

人生で一番ってくらい、すごく寒かったです（笑）。スタッフさんも寒そうにしていたのをよく覚えています。

─ 大阪出身ですが、普段は関西弁なんですか？

家族や友達と話すときは関西弁です！大阪に帰ると絶対に関西弁になります。ただ、方言が身に付いているからといってお仕事で苦労したことはないんです。上京してすぐの時から、標準語の方と話すと、自然に標準語で話せちゃうんです。たぶん影響されやすい人間なんだと思います。ある意味、特技かも（笑）。これが外国語とかでも活かせたらいいんですけどね。

─ 今年5月に、今作の先行上映舞台挨拶で大阪に凱旋されました。

お仕事で地元に帰るのがずっと夢だったので嬉しかったです。家族も友人もすごく喜んでくれて。舞台挨拶には祖父母が駆けつけてくれました。親孝行できてるなと思いました！

─ 今後の目標を教えてください。

人間味のある演技ができる女優さんになりたいです。感情を大切に取り組めたらと思います。演技以外ではバラエティーにも挑戦したいです。大阪出身なので、小さい頃から新喜劇を観に行くほど、お笑いの文化には親しみがあります。平和でほんわかとした旅番組とか楽しそう！

─ 最後に、映画『サーチライト-遊星散歩-』をご覧になる方へメッセージをお願いします。

この映画を観て、「何かを受け取ってほしい」、「こう感じてほしい」というのではなく、とにかく一人でも多くの方に観ていただきたいです。貧困やヤングケアラーなど、いろんな社会問題を取り上げている作品ですが、まずはこの作品を一つの「映画」として捉えていただきたいです。深く考えることも大切だと思う一方で、もっと単純な気持ちで観ていただいてもいいのかなと感じます。

【プロフィール】
中井友望（なかい・とも）
2000年１月６日生まれ。大阪府出身。「ミスiD 2019」でグランプリを受賞。以後、女優として活躍している。主な出演作に『かそけきサンカヨウ』（2021年公開／監督・今泉力哉）、『シノノメ色の週末』（2021年公開／監督・穐山茉由）、『少女は卒業しない』（2023年公開／監督・中川駿）、『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』（2023年公開／監督・阪元裕吾）、『炎上する君』（2023年公開／監督・ふくだももこ）など。

『サーチライト-遊星散歩-』
2023年10月14日（土）K‘s cinemaほか全国順次公開

出演：中井友望、山脇辰哉、合田口洸、都丸紗也華、西本まりん、詩野、安楽涼、水間ロン、大沢真一郎、橋野純平／安藤聖／山中祟
監督：平波亘
企画・脚本：小野周子
企画協力：直井卓俊
配給：SPOTTED PRODUCTIONS

ヘアメイク 横山雷志郎（Yolken） ／ スタイリスト 粟野多美子
取材・文 須田真輝絵 ／ 撮影 M.Yamazaki