2024年1月20日(土)〜1月26日(金)、渋谷ユーロスペースにて、末吉ノブ監督が手がける映画『チャロの囀り』が公開される。それに先駆け、今回ひより役として出演する立仙愛理さんにインタビュー。アイドル業からお芝居に対する想いまで、赤裸々に語る。
〈INTERVIEW〉
— 映画『チャロの囀り』に出演が決まった時の心境を教えてださい。
演技が大好きだったのですが、これまでは舞台が多く、映像での演技をしたことがありませんでした。今回、長編の映画に参加することができてワクワクやウキウキと同時に、「できるかな?」という不安もありました。
— ひより役を演じるにあたって苦労したことはありますか?
リハーサルを行ったのですが、監督から舞台の芝居になっているとご指導いただきました。自分でも自覚はあったのですが、経験がないので映像のお芝居がどういうものなのか見ているだけではわからない部分がありました。作中でも、ここはやっぱりナチュラルな芝居じゃないんだろうなと感じてる部分も実際にあり、撮影が進むにつれて少しずつこういうものなのかなとわかって、変わっていきました。
舞台の演技では、自分の生声を後ろの人に届けないといけないので、感情を少しオーバーに見せてしまっていたのかなと。なので、ナチュラルな演技に苦労しました。この作品を撮ってから何年か経っているのですが、この作品が映像の芝居とは何かを考えるきっかけになったと思います。
— ひより率いる大学生の集団が話したり遊んでいたりする姿が印象的だったのですが、ご自身の学生生活はいかがでしたか?
私は高専という5年間の工業学校に通っていました。わいわい話すとかは全くなくて、休み時間は少しの物音も響くぐらい静かでした。親友がいたのですが、二人とも歌が大好きで、教室の隅とかで歌ったりハモリの練習をしたりしていました。学校の外に遊びに行くとか、体育祭で盛り上がるとかお昼ご飯をわいわい食べるとかがあまりなかったので、憧れの学生生活だな、こんなことやってみたかったなって思いながら演じていました。
— 作業着も似合いそうですね。
めっちゃ似合いますよ!高専時代は作業着を着て、電気回路を組んだりプログラミングをしたりしていました。溶接もできます。高校2年、3年生で機械工学科のやつをやらなくてはいけなくて、溶接、鋳造、旋盤はやりました。溶接の火花を撒き散らしながら作品を撮ったりしてみたいです(笑)。
— ひよりと自分の似ている部分はありますか?
似ているようでちょっと違うなという感じです。ひよりは結構優しいところがあって、決定的な言い方をしなかったり、応援にまわると思うのですが、私は結構ハッキリ言っちゃうと思います。そういう意味では、ひよりは優しいなと思っていました。私が優しくないみたいになっちゃう(笑)。優しいですわたしも。
— 友達役を希望していたそうですが、それはなぜですか?
そもそも、自分にヒロイン性を全く感じていませんでした。なぜかあまりそこに惹かれないというか。きっかけは分からないのですが、作品とかを見ていても陰で支える俳優さんに惹かれてしまうし、その人の演技が好きだなと。自分はバイプレイヤーになりたいっていうのは、昔から漠然とありました。ヒロインをしてしまうと、そこに行けなくなっちゃうような(笑)。
— 今回、北九州が舞台となっている作品ですが、ロケ地・九州での思い出はありますか?
ライブで福岡に行ったことはあったのですが、今回の撮影ではたくさんの場所を回ることができました。北九州って、やんちゃなイメージがかなりあったのですが、店の人とかもすごく優しかったです(笑)。あと、水炊きがすごく美味しかったです。もっと福岡が大好きになっていっているので、また行きたいと思っている場所です。
— 愛理さんが思う、ここを今回見て欲しい!というところはありますか?
やっぱり末吉ノブさんが映画監督をするということで、映像が全部綺麗というところです。MV監督とかスチールをやっている監督さんだからこそという視点で、外に見える背景とか、引きで演者さんを撮った時の風景とかを、全部考えながら決めているんだろうなというのをすごく感じていました。
— アイドルから俳優を目指そうと思ったきっかけを教えてください。
私は8歳の時に地元高知のエンターテインメントスクールに通っていました。そこで歌とお芝居とダンスを習っていたので、小学生の頃の夢はミュージカル女優さんのような舞台を中心に活動する人でした。でも、やっぱり東京で活動したいと思い、色々なオーディションを受けてそこで巡り会えたのがアイドルでした。アイドルになっても演技をしようと思って、AKB48の時から舞台などに挑戦させていただきました。アイドルをやったからこそできる演技がきっとあると思っているので、歌とお芝居とダンスを上手に融合させて表現していきたいです。
— アイドルの魅力や、アイドルをやって良かったと思える瞬間はありますか?
アイドルをやっていて良かったと思うのは、ファンの方の生きがいに少しでもなれているかもと思えた時です。つらい時に「これを見たよ」とか「これを聴いて元気になれたよ」「ライブに行くことが生きがいだよ」と言っていただけたり。何か生き甲斐がないと元気に生きていけないと思うのですが、それを私だと思っていただけるのは、とても光栄です。ファンの方からそのような言葉をいただけた時は本当にやっていて良かったと思いますし、大好きです!ファンの皆さんが。
— アイドルをしていて、つらかったことはありますか?
私は8歳から始めて、アイドルに合格するまでに11年かかりました。ということは、選ばれる要素がないのだと落ち込みながらも練習はやめなかったのですが、やっぱり周りには天性の可愛い子とかアイドルに向いている子、自分より若い子たちもたくさんいて、そういう子たちは長い年月をかけなくても選ばれるんだと感じる瞬間はたくさんありました。デビュー当時は、自分の容姿に自信がなかったので、生まれ持った可愛い子とか、才能があるキラキラしている人を見てすごく苦しい感情になりました。でも、そこで自分に何ができるかを考えたのが、笑いを取るとか、可愛い子ができない、ちょっと恥ずかしいことを率先してやってみたり、場を盛り上げたりすることでした。少しずつ容姿へのコンプレックスとか生まれ持った才能を持った人に対するコンプレックスとか、そういうものは消えていったかなと思います。今はメイクやスキンケアとか、変われる方法はたくさんあるということに気づいて、だいぶ変わりました。可愛いねって言っていただけることも前よりは増えたかなと思っています。
— メイクで変われるきっかけはあったんですか?
高専だったので周りにメイクをしている人がいなくて、田舎ということもあってずっとメイクを知らないまま育ちました。本当に分からなかったので、お母さんが使っているパウダーファンデーションをそのまま肌に塗りたくるだけとか、リップクリームを塗るということしかできなかった高校時代でした。コロナで時間があった時期に、メイクのYouTuberさんが紹介している動画を見て「あ、眉毛って描かないといけないんだ」と、かなり経ってから気づきました。眉毛を描くことで変われるということを知ってから、一から学んで結構メイクには力を入れるようになりました。妹がメイクやスキンケアが大好きなので、妹に聞いたりもしています。今も大好きです。毎日調べまくっています(笑)。
— 2023年を振り返って、どんな1年でしたか?
比較的ゆっくり過ごして、自分の気持ちや周りの人への想いを考え直した時期になりました。2023年の目標は「ゆっくり過ごして考え直す」だったので、休みの日はゆっくり過ごして、自分の気持ちと向き合う一年になったと思います。すごく充電ができた一年になりました。2024年はギアを飛ばして、生き急ぐ一年にしたいと思います!
— 2023年を漢字一文字で表すと?
「愛」です。今まで生きてきた中で、一番家族の愛を感じた一年でした。その愛があったから変われましたし周りの人を大切にしたい、家族を大切にしたいと思えました。それは家族が愛をくれて、伝えてくれたからです。頑張れたきっかけの一つに、8割?9割?いや、10割くらい家族の愛を感じたから、今すごく笑っていられると思います!
— 出演してみたいCMはありますか?
王林さんが出演しているCMを最近見かけたのですが、歌が好きなので歌を歌うCMはすごく前から憧れがあります。あと、演技をする時代劇風の、携帯会社さんのCMのような面白い感じのCMにも挑戦したいです。歌系かお芝居系に挑戦したいですね。
— 友達役以外でやりたい役柄はありますか?
学園ドラマに憧れています。今はそのルートがないので、私なりの方法でその中に飛び込んでいくぞっていう気持ちがあります。
— 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
初めての長編映像作品に挑戦しました。本当に映像が綺麗で「それでも世界は美しい」と書いてある通り、こんな世界でも美しい背景や景色があるということをもう一回気づいていただけるような作品になっていると思います。皆さん、是非ユーロスペースへ足を運んでいただければと思います。よろしくお願いします!
【PROFILE】
立仙愛理 Rissen Airi
1999年3月18日 高知県出身 A型
【映画情報】
映画『チャロの囀り』
監督・脚本:末吉ノブ
出演:卯ノ原圭吾、東宮綾音、芽衣子、米元信太郎、立仙愛理、宇佐美彩乃、松本響、渋江譲二 ほか
主題歌:LiSA『BEAUTIFUL WORLD』
公式サイト:https://charo-movie.bitfan.id
2024年1月20〜1月26日まで、渋谷・ユーロスペース(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F)にて上映が決定。
(取材・文 笹ケ瀬麻結/撮影 Nobb Sueyoshi)